乾いた秋空に、風に乗りどこからともなく神楽の囃子が聴こえてくる。今日はどこの社の秋祭りなのだろうか?染羽町、天石勝神社。地元の人たちがうどんやおでんをふるまい、神楽に見入っている。
のどかな日曜の午後、神楽の音につられて、染羽より遠くの人たちもやってくる。ブルーシートのかぶりつきで眺める男衆は、ときおり神楽の一段に向かって威勢のよい声をかける。「しゃっと舞えよ〜」、「おいショウキ!たまには勝ってみい!」
日が翳り、冷たい風が吹き始めたころ、オロチがはじまった。なぜか周囲で遊んでいた子どもたちは集められ、ブルーシートの最前列に座らされた。神楽をよく見慣れている子供たちは、それがなぜなのかもうすでに知っているのだ。
荒れ狂うオロチがひと巻、舞台から飛び降りてきた。歓声とともに逃げる子どもたち。
いつも見慣れた風景、そしていつものストーリー。野次のようにショウキが勝つことはありえない。日がな一日コップ酒でも飲みながら、神楽の囃子に身を任せてみよう。別にこの時間に意味などないのだ。延延と続く、「舞」・・・何も考えず見とれて過ごす。
この「舞と自分たちのいる世の眺めと、滑稽さにおいて、何か質的な相違がどこにあるというのだろうか?晴天の秋空の一日、神楽を見ながら何もしないで過ごす。一日ムダをしたと言っているようじゃ石見人としてまだまだ青い。